いきなりだが、チカランでお寿司が食べられるところをあげろと言われれば、ピンからキリまで含めると、いくらでもありそうだ。
ただ、そこにクオリティという条件を加えると、きっとその数はグッと減る。
さらに、カウンターという条件を加えようものなら、もう、ひとつしかない。
そう、 紫陽花 である。ここは、紛れもなく僕のお気に入りだ。
紫陽花は、デルタマスにあるGTVホテルの中に、凛と店を構えている。
そして、粋なのが、木曜日と金曜日しかお店を開けていないという点。これは、水曜日に食材を調達してくるからだとか何とか。理由はともあれ、レア度感は集客の要因にもなり得る。
さて、お気に入りの理由は何なのか…。
カウンターの醍醐味。
まずはこのカウンター。
目の前で惜しみもなく調理がなされ、出来立てが「はいどうぞ」と出される。エンターテイメントのそれに似ている部分がある。単純に楽しい。
出来立ては、それだけで価値となる。
料金設定。
見づらいかと思うが、この値段は破格としか言いようがない。あとに料理の写真を並べるが、採算を疑うレベルが故に、お得感が顔を覗かせる。
寿司紫陽花Set Menu が Rp 230,000 なり─。
料理。
この日は、お通しから度肝を抜かれる牡蠣の燻製──。牡蠣好きにはたまらない。
からの、新鮮なお造り──。
正直、これだけでも個人的には大満足の内容だ。
新鮮さはそれだけで価値となる。
ここから、怒濤のお寿司ラッシュが始まるから、もう、至福の絶頂だ。これは、文字と写真では伝わりきらない代物で、体験あるのみ。
ひとつひとつカウンターの向こう側から出される握りは、まるで国宝か何かのような重々しさを、まとっているようにみえてならない。多少のお酒の摂取が、それを演出するのかもしれない。あるいは、一品一品丁寧に握る大将の動作がそうさせるのかもしれない。何はともあれ美味しいのには変わりがない。
握りの写真は最後にまとめて載せておく。
シメは赤だし、これだけの鮮魚を口に運んだ後の赤だしは、より上等な品位に感じられ、満腹感に落ち着きを投じてくれる。
これらがお気に入りの理由である。
もうすぐ6月が訪れる─。
インドネシアはラマダン色に染まり始め、日本では梅雨が話題を牛耳る季節。雨、カタツムリ、湿気、傘、長靴、水溜り…、梅雨を連想させるモノやコトは数え上げればキリがない。
その中でもアジサイは、最も梅雨にマッチしていると僕は思っている。
日本の梅雨の風情に想いを馳せながら、紫陽花で至福のひと時を過ごすのも、決して悪くない。
この時期の渾身のお勧め寿司屋に、紫陽花をあげることに、僕は何故か心地よさを覚えてしまうのである。
そしていつの日か、営業日が毎日になったら、と願うばかりだ。